
4月17日(水)に、KDDIウェブコミュニケーションズ(以下KWC)が、クラウド電話API「Twilio」の日本でのサービス提供を正式に発表した。クラウド電話APIとは、インターネット上から、電話をかけたり、電話を受けたりできるサービスである。いままででも可能な技術ではあったが、APIが公開され、技術者が手軽に開発ができるTwilioに、新たなO2Oサービスとして様々な可能性を秘めていると個人的に感じている。
今回、日本でのローンチの日程に合わせ「Twilio」の共同創業者兼CEO ジェフ・ローソン氏が初めて日本に来日し「Twilio JAPAN SUMMIT」が行われたので参加してきた。今回はTwilioの米国、日本のサービス説明とその事例を中心にレポートする。 (※イベント実施からかなり時間がたってしまってごめんなさい)
|■Twilioとは
------------------------------------------------------------------------------Twilioは、クラウド電話APIの分野で実績のある米国のサービスで、2008年の創業以来、現在までに利用開発者数は15万人に達し、40カ国以上で提供されている。公開されたTwilioのAPIをアプリケーションに実装するだけで、以下の機能を簡単に自社WEBサービスに組み込むことができる。
・電話の送受信機能
・音声合成(テキストを音声に変換できる機能)
・オーディオ再生(アップロードした音声を再生する機能)
・通話内容の録音と保存
・電話会議(最大40人が参加できる電話会議機能)
・プッシュ音入力によるナビゲーション、メニューの実装
・ネットワークを通して音声データを送受信するVoIP機能
・SMS機能
利用されている代表サービスとしてはUberやAirBnbがある。
Uberとは、スマホのアプリから自分の居場所を教え予約できるハイヤーサービスである。タクシーより少々高いが、なかなかタクシーが捕まらない海外では、タクシーを見つける努力がいらない、ユーザの居場所にいちばん近い空車を見つけてくれるので待ち時間が短い、決済が簡単であることでユーザーに支持を得ている。タクシーを待つ中で、もしもユーザが不安に感じれば、運転手に電話をかけることができ、そこでTwilioサービスが利用されている。
AirBnbは、自宅の空いている部屋を持つ人(ホスト)と旅行滞在先を探している人(ゲスト)とを結びつけるサービスである。ゲストは宿泊代が安くすみ、ホストは収入を得るという経済的メリットだけでなく、地元の人々との交流で地元のお宝情報を得ることができたり、異なる文化で暮らしてきた旅行者の人生と出会うこともサービスが提供している価値である。Twilioは、ゲストとホストとの電話連絡の際に利用されている。
|■日本版Twilioの狙いとサービス概要について
------------------------------------------------------------------------------KWCとTwilioは昨年10月に業務提携を発表し、国内展開へ向けて準備を進めてきた。今回の日本版Twilioサービスリリースに伴い、以下の対応がされ、日本人の使いやすい環境が整った。
・050電話番号販売
・音声品質向上
・日本語合成音声
・日本円表記
・日本語ドキュメント
・日本語サポート ・・・など
為替や言語問題の解消も大きいが、一番大きいのは、日本にサーバが準備されたことではないだろうか。これにより、低遅延が実現され、また音声品質の向上もされた。
KWCは「boundio(バウンディオ)という類似したサービスを展開していたが、今回Twilioの日本版リリースに伴い、こちらのサービスは停止となった。バウンディオはアウトバウンド(発信)のみだったが、Twilioではインバウンド(受信)、VoIPにも対応できるようになった。残念なのは一番期待していたSMSがまだ未対応ということである。料金に関しては、今まで提供していたバウンディオよりも低料金になり、より使いやすい料金体系となっている。
※発表資料より抜粋
日本での採用事例としては、以下の4社の紹介があった。
1.coco-do/日本デジタルオフィス
coco-doとは、地図やWEBサイト、写真をペンと音声でデコって共有できる新感覚のコミュニケーションツールである。この中の1つの機能として、無料IP電話サービス機能「coco-phone」が追加され、電話をしながら、写真や地図などをできるようになった。これにより、コミュニケーションが向上し、トラブル回避となると説明。新しい時代のコミュニケーションのやり方を考えていきたいと最後を締めた。
coco-doとは、地図やWEBサイト、写真をペンと音声でデコって共有できる新感覚のコミュニケーションツールである。この中の1つの機能として、無料IP電話サービス機能「coco-phone」が追加され、電話をしながら、写真や地図などをできるようになった。これにより、コミュニケーションが向上し、トラブル回避となると説明。新しい時代のコミュニケーションのやり方を考えていきたいと最後を締めた。
2.iPROS
iPROSとは、製造業の方が新しい製品を開発する際に、部品や素材を探す会社と、そういった部品や素材を提供したい会社をマッチングするサービスである。iPROSのコンバージョンポイントは購入ではなく「問い合わせ」であり、今まではWEBベースの問い合わせしか把握できていなかった。今回Twilioを導入したことによって、電話での問い合わせを把握できるようになった。2ヶ月ほど計測したところ、オンラインよりも3,4倍の問い合わせがあることがわかったという。
iPROSとは、製造業の方が新しい製品を開発する際に、部品や素材を探す会社と、そういった部品や素材を提供したい会社をマッチングするサービスである。iPROSのコンバージョンポイントは購入ではなく「問い合わせ」であり、今まではWEBベースの問い合わせしか把握できていなかった。今回Twilioを導入したことによって、電話での問い合わせを把握できるようになった。2ヶ月ほど計測したところ、オンラインよりも3,4倍の問い合わせがあることがわかったという。
こういったコールトラッキングは他社のサービスでもできたが、TwilioはAPIを提供してくれていることが大きく、エンジニアが自由に変更することができることも魅力的なポイントであると話した。実装は2日ほどだったとのこと。
3.「RabbitScope」(http://b-rabbit.jp/rs/)/エスキューイズム
エスキューイズムでは、業務システムパッケージである「RabbitScope」へTwilioを組み込んだ事例が紹介され、今後導入予定の、ECサーバ監視の「RabbitCommerce」、M2M監視の「Mother ship」についても説明された。4月17日より「RabbitScope」のみ、β版の提供が始まったとのこと。
<RabbitScope>
<Rabbit commerce>
サーバ監視だけでなく、在庫がゼロになった、もしくは閾値10個をきったなどの在庫切れ電話アラートも実装されており、電話がかかってきた際にそのまま在庫数と仕入れ指示を数字入力できる。また、緊急お問い合わせアラート、倉庫(WMS)連携で入荷待ちの電話通知なども実装されている
サーバ監視だけでなく、在庫がゼロになった、もしくは閾値10個をきったなどの在庫切れ電話アラートも実装されており、電話がかかってきた際にそのまま在庫数と仕入れ指示を数字入力できる。また、緊急お問い合わせアラート、倉庫(WMS)連携で入荷待ちの電話通知なども実装されている
<Mother ship>
M2M監視サービスで、センサー値の異常値により自動電話アラートをし、そのログ管理もできる。また、モバイル+GPSセンサーでどこに外回りをしているのかという営業管理もできれば、車+GPSセンサーで配車管理も可能になる。車のルート管理に先ほどの「Rabbit commerce」をつければ、ネットスーパーが可能になると考える。
4.mana.bo(http://mana.bo/lp/a)
「mana.bo」とは、受験生向けのオンタイム学習プラットフォームサービス。受験生が勉強中に問題につまづいたその時に、その問題をオンラインにアップして回答できる先生を募集し、回答できるという先生の中から先生を選択すれば、写メール・電話・チャットなどですぐに教えてもらえるサービスである。TwilioのAPIがあることにより電話、SMSサービスを数時間で実装することができ、また、授業の録音・再生ができるため、授業の再利用も可能になったと語った。
|■蛇足(めんどくさいこというよ)
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電話APIは、まだ日本ではそれほど使われていない。ブルーオーシャンなマーケットだと思う。KWCはバウンディオというサービスを開発しリリースしていたが、料金も高く、アウトバウンド機能しか実装されていなかった。今回は、その分野のパイオニアであり、世界中で利用されているTwilioと提携し、いちはやくインバウンド機能やVoIPのサービスを日本で提供しはじめた。料金もバウンディオと比較すると利用しやすい価格帯になり、やっと電話APIが利用しやすい環境が整ったと感じており、どのように普及されていくのか?とても興味深く思っている。
リアルタイムで双方向コミュニケーションをとることができる「電話」は、緊急時にとても力を発揮する。先日駐車場に閉じ込められたが、メッセージで連絡しても誰も気付いてくれなかったが、電話したら助けにきてもらえた。サービス担当者にとっては、トラブル時に複数人で電話会議ができれば、対応判断や情報シェアが迅速に、そして楽にできるなっとも思った。また、ITリテラシーの低い人にもなじみが深く、利用層のターゲットを広げることも可能だ。
電話APIはオンラインとオフラインを結ぶ手段の一つだと考えている。その意味で、今までにない新しい顧客体験や、便利で効率的なコミュニケーションが生まれていくことに期待している。
個人的には、コンシューマサービスよりもコールセンターなどのビジネスユースでの活用のほうが利用されやすいと思っており、その広がりに期待をしている。今まで何百万とかかっていた電話連動機能が数万円で、数週間かかっていた実装が数日でできる可能性を秘めている。
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